薙刀の魅力とは?現代にも受け継がれる長柄武器について解説します

2022年07月22日(金)

薙刀(なぎなた)というと、剣道などと同じく、武道の一種として現存し、主に女子が習う武道(この場合は「なぎなた」と表記)というイメージがあります。しかし、薙刀は、半世紀にわたって日本を分断した戦乱期である南北朝時代において、主要武器のひとつとして武将たちに好まれた長柄武器でした。
ここでは、薙刀の歴史や長巻との違い、種類など、薙刀の基礎知識を解説します。

薙刀とは?

薙刀は、日本の長柄武器の一種で、日本刀に含まれます。長い柄と、幅が広めの刀身が特徴で、文字通り“薙ぎ斬る”武器として作られました。
その形状から、かつては「長刀(なぎなた)」と表記されていましたが、後に打刀のことを短刀に対する「長刀(ちょうとう)」と呼ぶようになったことから、一般的には「薙刀」と表記するようになりました。

薙刀の刀身

薙刀の刀身は、「穂」とも呼ばれ、長さは1尺(約30cm)から2尺(約60cm)ほどのものが主流ですが、3尺(約90cm)を超えるものも存在します。時代や持ち主の趣向によって刀身が長くなったり、切先にかけて幅が広くなったりと移り変わり、形状だけで時代は特定できません。刀身の先端にかけて反りがある片刃のものが多いですが、中には切先が両刃になっているものもあります。
茎(なかご、柄に納める部位)は強度を考えて刀よりも長く作られ、概ね刀身と同程度の長さです。樋(軽量化を目的に彫られた溝)はたいてい刀身の中程まで掻いてあることが多く、これを薙刀樋と呼びます。

薙刀の柄

一般的に、薙刀の柄は3尺から6尺(約180cm)と幅広く、持ち主の身長や技量によってさまざまな長さが存在したようです。断面は楕円形で、石突(柄の先端部分)が半月状になっていることが多く、石突側でも斬りつけられるようにできていたともいわれています。

薙刀の歴史

薙刀が登場したのは平安時代といわれますが、奈良時代にあった手鉾と形や使用方法が酷使しているため、斬撃する武器としての薙刀はそのくらいから登場しているともいえ、はっきりしていません。
平安時代後期から現代に至るまでの、薙刀の歴史について追ってみましょう。

平安時代後期

薙刀は、接戦において非常に強力な武器として、平安時代後期から急速に普及します。
「菖蒲造」と呼ばれる形状の刀身に長い柄をつけたものから派生し、強度を増すために刀身の幅を広げ、反りを強くし、やがて薙刀らしい形状が確立します。薙刀は、平安時代末期の人物、武蔵坊弁慶の得物としても有名です。

鎌倉時代~南北朝時代

鎌倉時代から南北朝時代にかけて、戦闘は個人戦が主流でした。馬上では太刀が便利でしたが、地上戦ではリーチがあり、殺傷力も高い薙刀が主力武器として脚光を浴びます。名刀工による精巧な薙刀も誕生し、まさに薙刀の全盛期とも呼べる時代の到来です。僧兵の武器としてイメージがあるのも、この頃の絵巻に描かれる多くの僧兵が、薙刀を持っていることからかもしれません。

室町時代~安土桃山時代

室町時代以降になると、日本は戦国時代に突入します。戦闘様式が個人戦から集団戦に変化し、将兵と多数の歩兵で構成された軍団同士の戦いになりました。
そうなると、まわりに歩兵が多くなる集団戦では、味方を傷つけてしまう恐れが出て薙刀の良さを発揮できません。目の前の敵を突いたり、振り下ろして叩いたりできる槍のほうが機能的であるため、長柄武器としての薙刀は、次第に主流武器としての座を奪われていきます。
そして戦場で用いられなくなった薙刀は、やがて打刀に作り変えられるようになります。これを「薙刀直し」と呼びますが、長きに渡って戦場で活躍してきた薙刀だけに品質が高いものが多く、「薙刀直しに鈍刀(なまくら)なし」といわれました。実際、現存する薙刀直しの刀には名刀が多いといわれます。

江戸時代~現代

一度は衰退した薙刀ですが、江戸時代に入り、武道の技として、また武家の女子の嗜みとして「薙刀術」が登場します。ただし、長く戦乱の時代から遠のいているため、主流武器として返り咲くことはなく、剣術に対する異種武術のひとつとして伝承されるに留まっています。
明治、大正と経て昭和時代になると、政府の主導で女子の体育教育の一貫として「薙刀道」が取り入れられました。第二次大戦後、薙刀道教育は廃止されますが、武術としての技は後世に受け継がれ、「なぎなた」と名称を変えて現代にも受け継がれているのです。当然ながら、「なぎなた」となると日本刀としての薙刀ではなく、あくまで武術として残っていることになります。

薙刀と長巻との違い

薙刀と同じ長柄武器に、長巻があります。用途がほぼ同じであるため区別がしづらいのですが、長巻は、長く作られた太刀、いわゆる「大太刀」から派生した武器です。
薙刀と異なる点は、刀身の幅が太刀と同じであること、柄は3尺ほどで、柄の部分全体に糸を巻きしめて握りやすくしていることなどが挙げられます。

薙刀の種類

薙刀には、長さによる違いと、刀身の形状による違いによって種類が分けられます。
主なものとして、次に挙げる5つを紹介しましょう。

大薙刀

大薙刀は太刀の長大化が流行した南北朝時代に多く作られました。最盛期には、刀身が5尺(約150cm)にも及ぶものもあったようです。
ただし、それまでの薙刀よりも、刀身と柄を合わせた全体が長ければすべて大薙刀と呼ばれ、刀身の長さは関係ありませんでした。『軍記物』の中に、刀身の長さが同じでも、片方を大薙刀、もう片方を小薙刀とする表記が見られます。

小薙刀

大薙刀が登場すると、それまでの薙刀を「小薙刀」として区別しました。目安として、柄を地上に立てて、持つ人の肩から耳ぐらいの高さであれば、旧来の薙刀、すなわち小薙刀と呼ばれます。

静形薙刀

静形薙刀は、源義経の愛妾、静御前にちなんで名付けられました。刀身の幅が狭く、反りが弱いのが特徴です。男薙刀とも呼ばれます。

巴形薙刀

巴形薙刀は、木曽義仲の愛妾、巴御前にちなんで名付けられました。刀身の幅が広めで反りが強く、小さな力で切りつけやすいのが特徴です。女薙刀とも呼ばれますが、刀身が広い分、扱いにはそれなりに技量が必要であるため、非力なもののための薙刀というわけではないようです。

筑紫薙刀

筑紫薙刀は、筑紫の大名、大友家を中心に、九州地方で盛んに使われた薙刀です。最大の特徴はその特殊な形状にあります。筑紫薙刀の刀身には茎がなく、代わりにあるのは「櫃」と呼ばれる輪状の金具です。この櫃に、柄を挿し込んで固定します。

薙刀は、一度衰退しながらも復活し現代にも受け継がれる長柄武器

薙刀は1000年もの歴史を持つ、日本刀の一種です。かつては、戦場での主流武器として武士のあいだで重宝されてきました。時代の移り変わりとともに、その役割を終えましたが、近代に入って武術として見直され、現代にも連綿と受け継がれています。
何より、薙刀は一度衰退したことから現存すること自体が非常に貴重。薙刀直しで打刀に変えられているものもあり、もし自宅にあるようなら、専門家に鑑定を依頼することをおすすめします。

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